TCFD提言に基づく情報開示

TCFD提言に基づく情報開示2024

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TOKAIグループは社会が直面する様々な課題の解決に向け積極的に取り組みを進めてまいりました。2021年12月にはTOKAIグループ「サステナビリティ宣言」を策定し、特定したマテリアリティには取組課題と2030年までに達成すべき目標を設定いたしました。その中でも2050年のカーボンニュートラルの達成や気候変動課題への対応は、世界規模で取り組みが求められる社会問題であり、当社グループの提供するエネルギーとも密接にかかわる重要なテーマであると認識しています。

当社グループでは、TCFDフレームワークを活用した「気候変動リスク及び機会」の特定及び対応策の策定と経営戦略への統合が、当社グループの持続的成長と企業価値向上に資するものと考え、TCFDガイドラインに即した情報開示を2022年度に初めて行いました。

今後もシナリオ分析を通じた当社グループの気候変動課題に対するレジリエンスの強化を図ると同時に、毎年度内容の見直しを行い、情報開示の充実に努め、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。

1 ガバナンス

当社グループは気候変動をはじめとする社会課題に積極的に関わりながら、持続可能な社会の実現へ貢献することを目指しており、取締役会の諮問機関の一つである「サステナビリティ推進委員会」を主体として、サステナビリティの視点を踏まえた経営を促進しています。「サステナビリティ推進委員会」は代表取締役社長(CEO)が委員長を務め、経営・リスク管理をはじめとした部署の担当役員、グループ各社社長及び客観的な視点によるアドバイスを活かすため社外取締役などのメンバーで構成されています。

当委員会は年2回開催しており、マテリアリティ及び取り組み課題の棚卸、目標達成に向けての取り組み状況の評価を実施しています。ここで協議された気候関連の取り組みや課題は取締役会に報告され、TOKAIグループ経営層による適切な管理・監督のもと、グループ各社で構成される「GX推進委員会」を通じて、グループ会社に対応を指示します。

サステナビリティ推進委員会の役割を表す図

2 戦略

(1)シナリオ分析の前提

時間軸

当社グループがカーボンニュートラルを目指す2050年を踏まえ、短期を2025年(「中期経営計画2025」の終了年)まで、中期を2030年(2050年の中間目標)まで、長期を2050年までと設定しました。なお、財務影響は2030年時点で評価しています。

短期 2025年(「中期経営計画2025」の終了年)
中期 2030年(2050年の中間目標)
長期 2050年

対象事業

分析対象事業は、当社グループの中でも特に重要性の高い5つの事業並びに事業会社とし、グループ売上高の98%を占めています(2022年度)。とりわけ当社グループの主力事業であるエネルギー事業は、脱炭素化への移行計画において大規模な事業環境変化が想定される事業領域であり、その影響規模を事前に評価しておくことの重要性を認識しています。

エネルギー事業 株式会社TOKAI、東海ガス株式会社
情報通信事業 株式会社TOKAIコミュニケーションズ
CATV事業 株式会社TOKAIケーブルネットワーク及び子会社10社
(株式会社いちはらケーブルテレビ、厚木伊勢原ケーブルネットワーク株式会社、エルシーブイ株式会社、株式会社倉敷ケーブルテレビ、株式会社テレビ津山、株式会社トコちゃんねる静岡、株式会社ネットテクノロジー静岡、東京ベイネットワーク株式会社、仙台CATV株式会社、沖縄ケーブルネットワーク株式会社)
建築設備不動産事業 株式会社TOKAI、東海ガス株式会社
アクア事業 株式会社TOKAI

シナリオ

当社グループは、気候変動課題が及ぼすリスクと機会、財務影響を把握するため、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つのシナリオ分析を実施し、その対応策の検討を行っています。

1.5℃シナリオ 4℃シナリオ
世界観

2015年のパリ協定にて示された世界観。脱炭素化の推進により 2100年までの気温上昇を1.5℃程度に抑制するために、政策規制の強化、技術発展がなされる事を想定したシナリオ。

参照シナリオ

IPCC: SSP1-1.9, SSP1-2.6
WEO: NZE

気候変動政策が十分進まず、GHG排出量は今後も増加し続け、その結果、産業革命期比で世界平均気温が2100年までに最大4℃上昇し、台風や洪水などの物理的被害が拡大・激甚化するシナリオ。

参照シナリオ

IPCC: SSP5-8.5, SSP3-7.0
WEO: STEPS/CPS

炭素税 140ドル/t-CO2 (IEA 「World Energy Outlook2023」) 42ドル/t-CO2 (IEA 「World Energy Outlook2023」)

以上のシナリオを想定し分析を行った結果、主要なリスクと機会、当社グループへの影響及び対応策は次の通りです。

(2)シナリオ分析結果

シナリオ分析結果の表

外部シナリオと当社固有の事情を考慮しながら当社グループの事業への影響についてシナリオ分析を行いました。移行リスク、物理リスク、機会の重要度を「発生可能性※1」(1~3評価)と「影響度※2」(1~3評価)の両面で検証し、右図のマトリックス表に基づき、3段階(大・中・小)で評価しました。

  1. ※1項目ごとに発生する可能性を予見し、可能性の大きさに応じて3段階で評価。
  2. ※2定量的に把握できる項目は営業利益への影響額を試算し、影響額が±50億円超は3、±10億円超は2、±10億円以下は1と3段階で評価。
  • 1.5℃シナリオ

    炭素税の導入・強化により、自社排出GHG(Scope1・2)に対する課税や、LPガス事業・都市ガス事業における調達コストが大きくなることが予想されます。また、GHG排出規制やエネルギーミックスの変化等により、ガスの需要が低下する可能性があります。
    また、省エネルギー機器の普及拡大により、ガス使用量が減少するリスクと、高効率機器等の販売機会が拡大する両面の影響が予想されます。一方で住宅の断熱性能向上への意識が高まり、断熱リフォームやZEH等の販売機会が拡大することも期待されます。

    炭素税の導入・強化により、自社排出GHG(Scope1・2)に対する課税や、LPガス事業・都市ガス事業における調達コストが大きくなることが予想されます。また、GHG排出規制やエネルギーミックスの変化等により、ガスの需要が低下する可能性があります。
    また、省エネルギー機器の普及拡大により、ガス使用量が減少するリスクと、高効率機器等の販売機会が拡大する両面の影響が予想されます。一方で住宅の断熱性能向上への意識が高まり、断熱リフォームやZEH等の販売機会が拡大することも期待されます。

  • 4℃シナリオ

    異常気象に伴う高潮や台風などの自然災害の激甚化により、当社施設(エネルギー供給設備・データセンター・通信設備等)、サプライチェーン、顧客の被災による事業活動の停止が予想されます。
    一方で、平均気温の上昇や猛暑等の影響によりアクア(宅配水)のニーズが高まることや、水害等による企業施設内のデータ破損を回避するため、危機管理体制の整ったクラウドなどのITサービスの需要が増加することが期待されます。
    更には、頻発する自然災害に関する地域情報発信機能として、コミュニティチャンネルを持つCATVのニーズが高まることも予想されます。

リスク/機会 分類 要因 対象事業 当社グループへの影響 時間軸 2030年における
財務影響
対応策
1.5℃ 4℃
リスク 移行 政策・法規制 炭素税の導入 全社
  • 自社排出GHG(Scope1・2)への課税
中期~長期
  • 自社施設の電力グリーン化や、LPガス配送効率化等によるGHGの削減
エネルギー
  • LPガス事業・都市ガス事業での調達コストの増加
中期~長期
  • サプライチェーン全体のGHGの削減
  • トランジション期(移行期)におけるクリーンエネルギーであるLPガス・都市ガスへの燃料転換推進
  • お客様への省エネルギー機器・再生可能エネルギー・コージェネレーション等の環境商品の販売拡大(機器利益の増加)
エネルギー政策の変化
  • GHG排出規制やエネルギーミックスの変化等によるガス需要の低下
中期~長期
技術 省エネルギー機器の普及拡大
  • 高効率給湯器の普及によるガス販売の減少
短期~長期
評判 低・脱炭素志向の高まり 全社
  • 社会の低・脱炭素事業重視による人財確保難
中期~長期
  • グループ従業員への環境教育の実施に伴う環境リテラシーの向上
物理 急性 自然災害の増加
  • 高潮等激甚化した自然災害による当社施設の損壊
短期~長期
  • 風水害対策の強化、BCPの徹底、防災体制の構築等によるレジリエンスの向上
慢性 地球環境・社会構造等の変化 エネルギー
  • 気温上昇・世帯人数の減少・住宅断熱性能の向上等によるガス販売量減少
短期~長期
  • 断熱リフォームやZEH等の販売拡大(工事利益の増加)
機会 政策 省エネルギー機器の普及促進政策
  • 高効率機器・再生可能エネルギー・コージェネレーション等の普及促進政策による機器販売の増加
短期~長期
  • お客様への省エネルギー機器・再生可能エネルギー・コージェネレーション等の環境商品の販売拡大
市場 自然災害の増加 情報通信
  • 水害等により企業施設内のデータが破損するリスクを回避するため、クラウドサービスの需要が増加
短期~長期
  • 法人向けクラウドサービスの販売拡大
CATV
  • 地域密着の防災情報・災害報道を発信するコミュニティチャンネル視聴ニーズの高まり
短期~長期
  • CATVサービスへの加入促進及び地域密着型番組制作機能の強化
慢性的な気温上昇 アクア
  • 平均気温の上昇や猛暑等の影響により、宅配飲料水ニーズの高まり
短期~長期
  • アクア生産体制の強化並びに販売拡大
評判 ESG投資への関心の高まり 全社
  • 投資家からの評価向上による資金調達力・企業価値の向上
短期~長期
  • TCFD開示をはじめ、気候変動関連の積極的な情報開示

(3)TOKAIグループのGX推進策

上記の分析結果を踏まえ、自社施設における太陽光発電の設置や、事業所等で使用する電気の省エネルギー化・再生可能エネルギー化などにより、自社排出GHG(Scope1・2)の削減に努めております。
また、お客様向けには、省エネルギー機器や再生可能エネルギーの普及促進に努め、エネルギー需要の維持・拡大を図っております。
さらには、自社施設・お客様向けの風水害対策の強化をはじめ、BCPの徹底、防災体制の構築により、レジリエンスの向上に努めております。

TOKAIグループでは、気候変動問題への対応を図るべく、GX戦略として、リスクの抑制に努めるとともに、成長の機会と捉え、事業拡大に繋げながら、低・脱炭素化への取り組みを推進しております。

【中期経営計画2025におけるGX戦略】

自らの事業活動より排出する
GHG削減施策(Scope1、2)
  • DX推進によるLPガス事業の配送効率化・自動検針化
  • 太陽光発電の自社設置
  • 事業所で使用する電気の再生可能エネルギー化 
お客様のエネルギー利用におけるGX推進
(Scope3及び削減貢献)
  • 省エネルギー機器の普及促進

    家庭用:高効率給湯器・ハイブリッド給湯器・エネファームの普及促進
    産業用:コージェネレーションの普及促進

  • 再生可能エネルギーの導入促進

    太陽光発電(PPA含む)+蓄電池の普及促進

  • 地域と一体となった低・脱炭素化推進

    公共施設の省エネルギー化・脱炭素化の推進
    エネルギー地産地消の推進

  • 原材料の脱炭素化への対応

    (~2030年)カーボンニュートラルガスの供給
    (~2050年)カーボンフリー燃料の供給

  • CO2クレジットでオフセットしたLPG/LNG

(4)GX関連プレスリリース

(5)TOKAIグループ GXの取り組み

TOKAI グループは、「中期経営計画2025」の重要戦略の一つに「持続的成⾧基盤の強化」を掲げ、グループ一体となって低・脱炭素化に取り組んでいます。
GX戦略として、「自らの事業活動におけるGX推進」と、「お客様のエネルギー利用におけるGX推進」の2つの軸で推進を図っています。

詳しくはこちらをご覧ください。

3 リスク管理

気候変動関連リスク及び機会の評価・管理を、原則として年次サイクルで実施しています。全社的な気候変動リスク管理の対応は、TOKAIホールディングスGX推進室が担っています。GX推進室は、グループ会社の社長並びに担当役員で構成される「GX推進委員会」を開催し、同委員会にて気候変動リスクの抽出・評価・検討を行います。更に、その結果をサステナビリティ推進委員会に報告し、協議します。
また、サステナビリティ推進委員会にて協議された気候変動課題については、GX推進委員会を通じてグループ会社にその優先順位について検討・対応策を指示するとともに、対応状況の進捗をフォローし、サステナビリティ推進委員会にフィードバックします。

リスク管理の図

4 指標と目標

当社グループは2023年5月に公表した「中期経営計画2025」において、低・脱炭素化への取り組みを持続的成長基盤の強化戦略として位置付けており、地域・お客様・サプライヤーと一体となってGHG削減に貢献し、2050年にカーボンニュートラルを実現することを掲げています。

指標と目標は以下のとおりです。

指標 目標
2030年度 2050年度
Scope1+2 GHG排出量
(基準年 2021年度比)
▲50%以上
(▲1.3万トン以上)
カーボンニュートラル
Scope3
サプライチェーンGHG排出量
サプライチェーンとの協働
指標と目標のグラフ
Scope1,2,3実績
(単位:千t-CO2
基準年
2021年度
2022年度 2023年度 基準年度比 基準年度比%
Scope1 自らの事業による温室効果ガスの直接排出 9.6 9.7 9.4 ▲0.2 ▲1.8%
Scope2 他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出 22.8 23.2 21.5 ▲1.3 ▲5.7%
Scope1+2計 32.4 32.9 31.0 ▲1.5 ▲4.5%
Scope3 カテゴリ―1 購入した製品・サービス 643.6 638.8 640.5 ▲3.0 ▲0.5%
カテゴリ―2 資本財 60.2 58.1 66.1 +5.9 +9.8%
カテゴリ―3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動 5.2 5.2 5.1 ▲0.1 ▲2.3%
カテゴリ―4 輸送、配送(上流) 3.9 3.7 3.7 ▲0.2 ▲6.4%
カテゴリ―5 事業から出る廃棄物 1.3 1.4 1.4 +0.1 +4.3%
カテゴリ―6 出張 1.3 1.4 1.4 +0.4 +33.1%
カテゴリ―7 雇用者の通勤 1.1 1.2 1.1 ▲0.1 ▲6.9%
カテゴリ―8 リース資産(上流) - - - - -
カテゴリ―9 輸送、配送(下流) - - - - -
カテゴリ―10 販売した製品の加工 - - - - -
カテゴリ―11 販売した製品の使用 1,468.1 1,409.0 1,426.4 ▲41.7 ▲2.8%
カテゴリ―12 販売した製品の廃棄 11.6 11.4 10.5 ▲1.1 ▲9.2%
カテゴリ―13 リース資産(下流) 103.7 105.6 104.6 +0.9 +0.9%
カテゴリ―14 フランチャイズ - - - - -
カテゴリ―15 投資 - - - - -
Scope3合計 2,298.8 2,235.9 2,260.7 ▲39.1 ▲1.7%
Scope1,2,3合計 2,332.2 2,268.8 2,291.7 ▲40.5 ▲1.7%
  • ★印のGHG排出量は、一般財団法人日本品質保証機構のISAE3410水準による第三者保証を取得しております
  • バウンダリ(算定範囲):TOKAIホールディングス及び関連会社22社 計23社 156拠点
  • Scope2はマーケット基準で算出しています。

第三者保証

TOKAIホールディングスは、温室効果ガス(GHG)排出量データの信頼性の向上のため、Scope1,2,3実績の★の付された2023年度及び基準年度である2021年度GHG排出量について、一般財団法人日本品質保証機構によるISAE3410水準の第三者保証を受けています。

【保証範囲】

■期間

 2023年度及び2021年度(基準年度)のGHG排出量
 (Scope1, Scope2, Scope3 カテゴリ1, 11)

■2023年度 バウンダリ(算定範囲)

株式会社TOKAIホールディングス、株式会社TOKAI、株式会社TOKAIコミュニケーションズ、株式会社TOKAIケーブルネットワーク+子会社10社、東海ガス株式会社、株式会社TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーション、株式会社TOKAマネジメントサービス、トーカイシティサービス株式会社、株式会社TOKAIライフプラス、東海造船運輸株式会社、株式会社エナジーライン、にかほガス株式会社、株式会社TOKAIキッズタッチ

計23社 156拠点